「なーるーみさん」

いい天気だ。空が青い。

屋上に寝転がり、3流青春文学小説に出てきそうな単語を頭に並べた。
その馬鹿馬鹿しい行為に自嘲の笑みを浮かべ、閉じていた瞼をゆっくりと開ける。
視線の先には、どう見ても1つ年上には見えない彼女がにっこり笑っていた。
おそらく語尾にハートのマークなんぞつけて呼んでいるんだろうな、
と、どうでもいい事を考える自分が滑稽だと思う。

「……何だ?」
「何してるんですか?」
「アンタには何をしているようにみえる?」
「一目瞭然ですね」
「じゃあ、そういう事だ」

間の抜けた会話に呆れつつも、まあ、いつもこんな感じか、と納得する。

「いい天気ですね〜」
「そうだな」

無精に答える自分に気分を害した様子もなく、笑いながら隣りに座る彼女にふと思いつく。

「なあ」
「はい?」

にっこりと微笑む彼女が何だか可愛く見えて、視力が落ちたか、と笑ってしまいそうになるのを堪えて、そのまま会話を進めることにする。

「アンタ、いつまで俺についてくる気だ?」
「いつまで…と申しますと?」

口元にうっすらと笑みを讃えて首を傾げる彼女に、思惑を見抜かれたような気がした。
その事に少なからず悔しさが過ぎる。

「俺といても得にならないだろ。わざわざ危険な目に遭う必要はないと思うが」
「あら、心配して下さるのですか?だとしたら、嬉しいです」
「心配はしてない。寧ろ俺の体裁の方が心配だ」
「む〜、どう意味ですか!」
「アンタといると悪に染まっていくカンジがして」
「失礼ですねー、ホント鳴海さんは女の子の扱いがなってません!」

まったくもう、と頬を膨らませながら怒り気味に息を弾ませる彼女に、短い溜息をつきながら上半身を起こす。
起こすついでに彼女の手を掴んでみた。

「何ですか?」
「小さい手だな」
「可愛いでしょ」

あー、はいはい、と適当に返事を返しながらも、掴んだ手を離さずにおいた。
我ながら、何してるんだと思ったが、まあ別段変に思われた訳でもないし、無性にその手に触れてみたかったというのが本音だ。
それを実行して何が悪い。

「で、いつまでついて来る気だ?」

彼女の手を弄びながら、唐突に話を戻してみる。

「前に言いませんでしたっけ?どこまでもついて行きますよって」
「覚えてないな」
「……たまには覚えていて下さいね」
「考慮しておく」
「曖昧な気がしますが、まあ良しとしますか。ではもう一度、天国に召される時までお供しますよ」

そう言って笑う彼女に、まあそれも悪くないか、と思う自分はかなり頭がイかれているかも知れない。
彼女と一緒に逝く事が何だか幸せそうに思えたから。
もちろん口に出しては言ったりしないが。

「……アンタと一緒に逝くなら天国よりは地獄の方がしっくりくるな」

失礼ですね、と愉快そうに笑う彼女の表情が酷く綺麗だった。
かなり毒されていると思いつつも、この感情が決して嫌なものではない事を最近重々悟っている。

手を離すのも名残惜しかったので、そのまま繋ぎながら立ち上がる。
見下ろしながら彼女に向かって、笑った。

「じゃあ、いくとするか」
「はい。どこまでもご一緒しましょう」

そうして彼女も立ち上がる。行く先に何があるが分からないが、逝けるとこまでいくとするか。


どこまでも。

一緒に。




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初書き。
うちの鳴ひよはこんな感じ。


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